ただよい

内側が冷たい。5年前はほんのり温かくて浮かんでいた気がする。熱がなくなってきたのか、風が吹いて涼しくなっているのか。あるところまではゆるやかに沈み、深いところへ流れた。そしたら、気づいたときにはそれまで感じていた重力がなくなって、いやそうではなかった、これまで内側に保存してきたあらゆるものごとを、飛行機から積荷を落としていくようにこぼした。気づいたときには軽くなっていて、でもそれはかつてのはじまりのときの軽さではなかった。沈んでいるようでもあり浮いているようでもある不思議な感覚。沈んでいるのか、浮かんでいるのか。時々眠くなる。目を閉じていたいと思う。でもどうしてか自分でもよくわからないのだけれど、そういう時なのにいきなり体が動きだすのだ。たいせつなことのようにも思う。それは理屈ではないし、そもそも僕たちにはわかりようのないことな気がしていて、個人的には無意味で無関係なもの同士の集まりの仕業なんじゃないかと思っているけれど。ただそれがなくなったときすべてが離れてとてつもなく遠くまで離れていくことはなんとなくわかる。星のつぶてを眺めているみたいに涼しくて冷たい。2025.9.11

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